ミニマリズム
~適度なシンプルさを

ミニマリズムの価値と問題点

私は、建築において、素材自体がもつ性質を保持しながら使うことが最良の方法だといつも考えています。ただ、それはミニマリズムとは違います。確かに私はミースが建築を絶対的な抽象の域に達させようとしたことを、すばらしいと感じました。

しかし、現代の建築は、ミースが建築をつくった頃よりも複雑なのです。サステイナビリティやコミュニケーション豊饒化の重要性などが、建築を常に豊かに、複雑にするのです。

だから、現代の建築において重要なのは、ミニマリズムではなく明快さです。そのために、できるだけシンプルにする、しかし必要以上にシンプルにすべきではないです。

適度であることが美しい

我々は不要なものをできる限り取り去ったシンプルな建築をつくっています。しかし私の場合、美しさの概念は、より複雑です。私はシンプルさよりも、「適切であること」のほうがより美しいと考えます。たとえば、人間はシンプルではない。人間が複雑な存在であるのと同様に、建築もまた複雑で美しい。

建築を適切な節度でシンプルに美しく設計することは可能だと信じています。たとえば、桂離宮は適当な限りに留められているからこそ美しいように思うのです。

写真:デュッセルドルフのオフィスビル
デュッセルドルフのオフィスビル

写真:アウディパビリオン
アウディパビリオン