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薄明のガラス
──その多様性と可能性

ヨーロッパのガラス建築で印象深く残るのは、その古い街並みや自然環境に融和し、半透明なガラスによって光と影の表現と素材感を極めた作品達である。
バルセロナ・パヴィリオン写真
バルセロナ・パヴィリオン/ミース・ファン・デル・ローエ/1929(1986復元)
Photo by Ikeuchi Seiji
ウィーン郵便貯金局写真
ウィーン郵便貯金局/オットー・ヴァーグナー/1906,1912
Photo by Miyake Shingo
ガラスファサードの表現の推移
1)
ガラスの本質
ガラスの最大の特性は「透明性」だが、不透明なガラスもあり、物性的には液体の特性を持つ固体と定義されている。
ガラスの主成分は地球の地核と同じなので「ガラスは地球そのもの」といえるほど根元的な自然素材でもある。
2)
ガラス建築−その透明と半透明
(1)透明性(トランスペアレンシー)
ガラス窓は古い歴史をもつが、その特質を透明性としたガラスファサードを実現したのはミースだろう。現在、フレームレス構法やLow-E複層によってガラスの本質「透明への回帰」は限りなく高度化して行く。
(2)半透明性(トランスル-センシ-)
極限に近い透明化が実現できた今、19世紀末のガラスの半透明で柔らかな光を生かした名作のような、透明性を超えた「薄明のガラス領域」をめざし始めたように見える。ガラスが建築全面を覆うようになると、機能的には完全に透明である必然性は薄れ、過剰な光や視界を適度に拡散し抑制することが求められる。

(池内清治/概要文責 編集部)