高齢期のための施設環境

大原一興 1958年東京都生。横浜国立大学工学部建設学科助教授
著書『個室のある老人ホーム』『バリア・フリーの生活環境論』『ハウス・アダプテーション』
『医療福祉学の理論』『エコミュージアム・理念と活動』等

URL ADDRESS:http://arch1.arc.ynu.ac.jp/~usr002/ohara/


多床室を個別空間化する試みの例
上=いくの喜楽苑、下=世田谷区立芦花ホーム
高齢者と環境設計の基礎
高齢者は一種の障害者であること、その障害がじわじわ進行すること、個人差がきわめて大きいことの3点を重視して高齢者を考える必要がある
また、高齢者の、特に冬期の寒さに弱い、筋力や感覚の低下により転んだりしやすい、視力が悪く明るさが必要なことと物が全般に黄色がかって見える、といった身体特性を認識した建築計画が必要だ

高齢者の居住施設における計画課題
高齢者施設の入居者も、まちの中で共に生活している実感が持てるよう、施設は地域に開かれねばならない
高齢者施設には、入居者のアイデンティティを確立できるプライバシーと、それを基礎にしたコミュニティ形成が必要だ
また、入居者の生活を自立させるためには、「介護する・される」という関係の絶対性から解放されるべきである

居住施設の設計手法
大規模施設では、10人程度ずつの生活単位を基本とした共用空間を充実させ、それらをまた組み合わせた、施設の空間構成が重要だ。ただ個室を並べるだけでは貧弱な空間になる。また、多床室でも、様々な工夫で個別性を確保できる
そうした空間が、プライバシーの確保、入居者間のトラブル回避、自己空間管理と愛着、個性の表出、活動性の向上、豊かな共同生活などを可能とする
グループリビング(グループホーム)は効果的だが、運営者や入居者などに左右される面が大きく、計画にあたって「住宅的」な解答が求められる

おわりに
将来、時代遅れにならない建築をつくるために個別に工夫を加えながら提案することが設計者の使命だ。高齢者の施設は基本的には、住宅設計のように個別的な解答が求められている
将来を解くカギのひとつは、ユーザーの視点とその参加である

(概要文責 編集部)

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