●座談会

自然とのつきあいは自ずと然らん

出席者--- 大江匡宿谷昌則知久昭夫池内清治山崎泰孝(司会)50音順


大江匡
おおえただす

大江氏顔写真

1954年 大阪市生 建築家・プランテック総合計画事務所主宰・早稲田大学理工学総合研究センター研究専任講師
コンピュータの創造的使い方をするデジタル・スタジオを構築し、環境と公共性をつねに意識した設計を行う。主な作品に、上野風月堂、ファンハウス、大分県中津市「木村記念館」、豊島合同庁舎、細見美術館、SANKYO新東京ビル等があり、著書に『大江匡のデジタル・スタジオ』がある


ライフサイクルコストを考えるとガラスは不利。人間の感情も含めればガラスを使いたいイメージはあるが

天井輻射冷房のSANKYO新東京本社ビルでは、除湿器が窓枠についている。そのため、庇の効果を狙ったこともあり窓が深い。また、同ビルでは、仕事の半分を支えている暗黙知を交通空間で増やすためにエレベータやオフィスと廊下の壁をガラスにした

RWEは高コストすぎる。僕はサッシがいらず安いプロフィリットガラスを向かい合わせるダブルスキンの建物を設計している

日本ではコアの位置で相当エネルギー効率が変わる。岐阜のSプロジェクトでは、どうしてもファサードが西側になるためルーバーを建て、そこに空調がなく自然の風の通る廊下がある。コンピュータ化が進んで暗い方が温熱環境もいいとなると、廊下を内側にし外側に窓をつける必要はない

普通の美術館の温熱コストの半分の京都の細見美術館も外部廊下で、空調したのは展示室と学芸員室と収蔵庫だけ


宿谷昌則
しゅくやまさのり

宿谷氏顔写真

1953年 東京生 建築環境学 武蔵工業大学環境情報学部・大学院建築学専攻教授
光や熱環境について統合的に研究し、エネルギー・環境問題を視野に、自然エネルギーを活用した建築環境システムを見いだすことを目指している。著書に、『光と熱の建築環境学』、『自然共生建築を求めて』他がある


1枚の透明ガラスを通る熱は断熱材無しの厚約15cmのRC壁の約2倍。2枚ガラスではほぼ同じになり、Low-E膜付複層ガラスは断熱材無しRC壁より断熱性が良い

複層ガラス製造エネルギーは1枚のガラスの約2倍だが、例えば東京で住宅の窓を複層にするとイニシャルの投入エネルギーの差は、ほぼ一冬で回収する

涼しさの感じ方を研究すると、気流のパターンが重要で約16秒周期で風が吹くと涼しい。こうした効果を考慮すると、全体を冷たくする発想は変わってくるんじゃないか

空間の明るさは直前にいた空間の明るさと大きな差があるとより強く感じることが研究で分かった。だから、オフィス空間で廊下の照度を落としてオフィスに入った時に明るく感じるようにすると、人工照明による熱負荷も落とせる

室内ほど空調する必要はない廊下のような緩衝空間を建築家と一緒にイメージしたり、空調設備がいらないような設備をつくるエンジニアが増えないと、本当の省エネルギーはできない

ライフスタイルも視野にいれる必要がある。夏の半袖・ノータイが徹底すれば冷房の設定温度は上がり、いろんな可能性が出てくる。建物をいじるんだったら、着ているものも合わせて考えるべき


知久昭夫
ちくあきお

知久氏顔写真

1944年 旧満州生 設備設計家・知久設備計画研究所主宰・千葉工業大学工業デザイン学科非常勤講師
単に機械まかせの設備ではなく、真に必要な建築環境とは何かを考えながら設備設計を行う。主な作品に、登米祝祭劇場、豊田市立美術館などがあり、著書に『設備から考える住宅の設計』(共著)、『住宅建築のリノベーション』(共著)ほかがある


RWEタワーの考え方は僕らに似ている。ガラスの外にブラインドをおくと日射を約8割カットできる。外ブラインドの風雨や駆動などの問題の解決策がダブルスキン

ドイツでは湿度が低く、春と秋の気候のいい時期が日本より長いらしいから、自然換気が利用できる。日本では6〜7月は高湿度だから除湿が必要

RWEでは、内側のペアガラスの日射透過率40%前後のLow-Eガラスとダブルスキン内のブラインドと組み合わせて、入射エネルギーの約9割をカットしている
おそらく、これからは熱線反射ガラスや熱線吸収ガラスの使い方はかなり減ってくる。Low-Eガラスは冷房だけでなく暖房にも効く

外壁の上下階区画がネックになるので、私が検討した某プロジェクトでもRWEのような対角線状の空気の流れを考えた

今後は輻射をさらに見直さないといけない。例えばブラインドは鉄製より布製が表面温度が低く、床も絨毯と木とでは1度ぐらい違う。人間を取り囲む壁面・天井・床の温度を空気温に近くする努力を建築と設備の両方がやると、同じエネルギーやコストでより快適にすごせる

最近の建築家はファサードをのっぺりするが、安全や太陽エネルギーなどを考えると、庇やベランダの効果を考えた方がいい。必要に応じて庇の角度を調節できると、かなり直射日光の軽減になる

設備コストは、まだかなり節約できる。世の中は限界だというが、それは今までの常識の範囲でのこと。もう少しぎりぎりまでできる技術はあるが、それをやる設計者が日本には比較的少ない


池内清治
いけうちせいじ

池内氏顔写真

1945年 鳥取県生 日本板硝子 建築硝子部 技術部長
主に建築用板ガラスやガラス構法の商品企画・開発推進・市場開発などを行う


RWEは、Low-Eガラスを使うことで、夏は熱線をはね返し、冬は熱を逃がさない。Low-Eで夏も冬も非常にマイルドになり、ガラスの弱点がカバーできる

ガラスを2重・3重に使うと緑がかってくるので、日本でも高透過ガラスを使いたいとの話が増えている。透明度が高い必要のある太陽電池で使われるガラスを利用すれば、コスト的にも使い易くなり、これからは変わる

最近、網も熱割れもないガラスができたので、これまで法規的に対応できなかった外壁の上下階区画自身も防火区画も技術的にはガラスで可能になる


山崎泰孝
やまざきやすたか

山崎氏顔写真

1935年 芦屋市生 建築家・近畿大学教授・AZ環境計画研究所主宰
劇場の計画・設計を中心に、広く美術・美術館・地域文化育成等のコンサルタントなどを行い、地域文化の個性をとらえる「風景論」の確立に努力している
作品に、芦屋ルナホール、善光寺別院願王寺、登米祝祭劇場、別府B-Con Plaza ハーモニアホール、扶桑文化会館、リベラルサンシャイン、建国寺ビハーラ(老人福祉施設)などがあり、著作に『ホールの計画と運営』『京都・南座の記録』他がある


ガラスの色は欧米の建築家の方が気にする。日本の方が、色は決まってますといったら、その中で選んで不思議に思っていない

僕は、あまりメカニックにやらずに、暑かったら涼しいところに行けばいい。あんまり快適すぎると人間によくないんじゃないか、と思う

いろんなジャンルを超えて、それぞれの知をもちよることが新しい展開を生む


(概要文責 編集部)


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