自然の響きを聴く

山崎泰孝

 
 

20世紀の近代建築運動は、庇や傾斜した屋根、縁側のような緩衝空間を嫌ったが、それを可能にした大量消費はもはや21世紀の建築ではあり得ない
これから期待されるのは、自然のあるがままを生かして楽しむ過去の姿勢を最新技術を用いて現代的な姿で蘇らせることだろう

その一つの試みとして、現在の技術の粋をつくしてドイツの環境に合わせつくられているRWEタワーを取り上げた。そこには、数々の工夫が見られ、参考になる面も多い

しかし、そのままの真似は不可能だ。なぜなら、自然と共にあろうとする建築は、その依って建つ場の自然の声の響きを注意深く聴かねばならないからだ。ドイツと日本とでは、自ずとその自然は異なる
だから、まずは謙虚に周囲を見回す必要がある。その息吹を聞き取り、日本の歴史が生んできた空間構造──例えば縁側や深い軒先──を再評価し、それを最新の技術で再現することが考えられねばならない

そうしてこそ、新しい時代の建築が生まれるだろう

 
 (概要文責 編集部)


 


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