家に帰る──痴呆性老人と建築空間

羽田澄子
1926年旧満州大連市生。記録映画作家
作品『薄墨の桜』『歌舞伎役者──片岡仁左衛門』『住民が選択した町の福祉』等




スウェーデン・バルツァルゴーデンの
グループホーム
photo :Haneda Sumiko
15年前に私が映画『痴呆性老人の世界』を撮影した病院では「介護の仕方で痴呆の症状は改善できる」との考えで介護し、効果をあげていた。疲れた家族から病院に渡された老人は、スタッフの努力で落ち着いてくる
ところが、老人たちには家ではない所にいる感覚があって、「そろそろ家に帰ります」と徘徊する

私は、病院の空間に問題がある気がした。行きとどいた介護をうけても、病院の建物では家にいる気分にならず、「家に帰ろうか」となる。ところが家に帰っても、家庭ではこの病院のような介護は難しく、老人は病院に戻ってくる

映画『安心して老いるために』の撮影でスウェーデンで痴呆性老人のためのグループホームを取材して、その解決策を見た
色々なグループホームがあるが、撮影したバルツァルゴーデンは大きな3階建ての一軒家で、個室と、共同の居間と食堂があった。インテリアは老人たちが人生で最も活躍していた1930年代の雰囲気だった
そこでは7人の入居者に対して介護スタッフは11人と、日本の病院の50人の老人に対して10数名の看護婦とは桁違いだ

病院でも家でも落ち着かなかった日本の老人と違い、バルツァルゴーデンの老人たちは落ち着いていた。老人たちは温かい介護を、家(ホームの雰囲気をもっている)に暮らしながら受けている
根底の不安感がなくなることで、痴呆症は治らなくても穏やかに落ち着いた生活ができるのだ
建物は、介護の土台を支える大きな介護の力なのだと、グループホームを知って思った

(概要文責 編集部)

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