ミニマムコミュニティの形成を求めて──函館あいの里

林崎光弘
1941年函館生。函館あいの里理事兼施設長。著書『痴呆性老人グループホームケアの理念と技術』
『グループホームの空間設計とケアシステム』ほか





函館あいの里内観
Photo:Aoki Tsukasa
当グループホームの理念
「函館あいの里」は、いわば「在宅共同型施設」で、特別養護老人ホームと自宅の中間と考えている。よって、施設職員は「代理家族」だ。痴呆老人に必要な生活リハビリは、痴呆のリハビリ技術と、介護をして「もらった/あげた」の関係を作らぬ心理的リハビリ手法を持ったリビングパートナーが行う

設備の具体的工夫
山懐の自然林に恵まれた静かな環境が、人間の指導力に勝る自然治癒力を増強させている
建物も肩を並べる関係を好む日本の特長を生かし、「並列構造」(長屋構造)とした。入居者居室は、個室が11室、2人部屋が2室、特別介護室(3人部屋)が1室である
参考図:函館あいの里平面図・データ

老人の生活の流れ
生活の3割を健康、食事、入浴に、7割をエレガンスやリラックス、セレモニーに充てている。老人自身の決定権を尊重し、起床、消灯、面会時間の規制・制限はない
また、入居者は、重症者を軽症者が手助けする互助精神をうみ生活共同体意識を確立させる適切なグループバランスである

ケアの特殊性
「感覚統合訓練」「フィードバック訓練」を中心に「ゆっくり」「楽しく」「いっしょに」を具体的方法としている。そうして「生活様式の再編成」をし、最終目標たるミニマムコミュニティの形成を促す

入居者の状態変化
「問題老人」といわれる人が多く入居してくるが、安心感と安住感から「問題行動」が徐々に消失し、何の問題もなく生活している

現状の課題と今後の可能性
経済的負担が大きいことと、スタッフ教育や人数配置の問題が課題だ
今後、需要は増加するだろうが、それに伴って質が向上せねばならない。これからが正念場である

(概要文責 編集部)

函館あいの里データ


目次に戻るTOPに戻る
ご購読ご感想バックナンバーリスト日本板硝子ホームページ


提供:日本板硝子株式会社