私の印象に残った「知」の空間

橿原考古学研究所付属博物館
石野博信(考古学)

大和の畝傍山を背景に、埴輪の馬と人が立つ中庭がいい。

ここは考古学の専門館で、発掘された大和の古代がところせましと展開する。 2500年前に東北や北陸から大和に運ばれてきた土器。 黄金色に輝く2000年前のまつりのカネ。 1700年前の貴人の鏡やアクセサリーの数々などなど・・・。

展示室はすべて1階で、疲れをほぐすときにはどの室からでも中庭に出れる。

実物大の展示の威力
板倉聖宜(国立教育研究所員:科学史・科学教育専攻)

最近の科学館でよく見る光と音で圧倒させる映像は、一般の人々にとって、自分たちにはまるで理解できないものを見せつけられて、科学技術に対する恐怖心を煽られることになりかねない。

ロンドンの科学博物館でライト兄弟の飛行機の実物大の模型などを見て、やっと飛行機の発明の歴史が分かった気がした。

日本の博物館にも恐竜や鯨など実物大の模型が展示してあるが、やはり実物大というのは迫力がある。

歴史は遊戯
大室幹雄(歴史人類学)

南ドイツの小さな町クルムバッハのプラッセンブルク城に錫人形博物館がある。

旧石器時代から古代、中世、バロックをへて近代にいたる文化史が、30万の錫人形を用いて210の場景に再現されている。エジプトのピラミッド建設、ヴァイキングによる修道院襲撃、19世紀初めの都市ブルジョアの風俗など、とりどりに生々としたパノラマが愛らしく構成されている。

それらの210の場景のうち57が戦争の情景で、すべて錫人形の群れによって構成されているが、この再現の手法は、私たちの歴史理解が、素朴な事実信仰とは異なった次元で成立することを、見ることの楽しさによって告げている。

伊勢神宮農業館
藤森照信(建築史)

今はもうなくなってしまったが、伊勢神宮の手前の伊勢山にあった伊勢神宮農業館では、昭和初期の日本各地の農業技術の先端を展示しており、その古色蒼然さに目をうばわれた。

博物館の本質は、生々しい現実とは別の世界、言ってしまえば“死の世界”を見せることにあると思う僕にとって、なかなか良かったのだが。

(いずれの文章も概要文責 編集部)


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