自然とのつきあいは自ずと然らん |
おおえただす |
1954年 大阪市生 建築家・プランテック総合計画事務所主宰・早稲田大学理工学総合研究センター研究専任講師 ライフサイクルコストを考えるとガラスは不利。人間の感情も含めればガラスを使いたいイメージはあるが 天井輻射冷房のSANKYO新東京本社ビルでは、除湿器が窓枠についている。そのため、庇の効果を狙ったこともあり窓が深い。また、同ビルでは、仕事の半分を支えている暗黙知を交通空間で増やすためにエレベータやオフィスと廊下の壁をガラスにした RWEは高コストすぎる。僕はサッシがいらず安いプロフィリットガラスを向かい合わせるダブルスキンの建物を設計している 日本ではコアの位置で相当エネルギー効率が変わる。岐阜のSプロジェクトでは、どうしてもファサードが西側になるためルーバーを建て、そこに空調がなく自然の風の通る廊下がある。コンピュータ化が進んで暗い方が温熱環境もいいとなると、廊下を内側にし外側に窓をつける必要はない 普通の美術館の温熱コストの半分の京都の細見美術館も外部廊下で、空調したのは展示室と学芸員室と収蔵庫だけ
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しゅくやまさのり |
1953年 東京生 建築環境学 武蔵工業大学環境情報学部・大学院建築学専攻教授 1枚の透明ガラスを通る熱は断熱材無しの厚約15cmのRC壁の約2倍。2枚ガラスではほぼ同じになり、Low-E膜付複層ガラスは断熱材無しRC壁より断熱性が良い 複層ガラス製造エネルギーは1枚のガラスの約2倍だが、例えば東京で住宅の窓を複層にするとイニシャルの投入エネルギーの差は、ほぼ一冬で回収する 涼しさの感じ方を研究すると、気流のパターンが重要で約16秒周期で風が吹くと涼しい。こうした効果を考慮すると、全体を冷たくする発想は変わってくるんじゃないか 空間の明るさは直前にいた空間の明るさと大きな差があるとより強く感じることが研究で分かった。だから、オフィス空間で廊下の照度を落としてオフィスに入った時に明るく感じるようにすると、人工照明による熱負荷も落とせる 室内ほど空調する必要はない廊下のような緩衝空間を建築家と一緒にイメージしたり、空調設備がいらないような設備をつくるエンジニアが増えないと、本当の省エネルギーはできない ライフスタイルも視野にいれる必要がある。夏の半袖・ノータイが徹底すれば冷房の設定温度は上がり、いろんな可能性が出てくる。建物をいじるんだったら、着ているものも合わせて考えるべき |
ちくあきお |
1944年 旧満州生 設備設計家・知久設備計画研究所主宰・千葉工業大学工業デザイン学科非常勤講師 RWEタワーの考え方は僕らに似ている。ガラスの外にブラインドをおくと日射を約8割カットできる。外ブラインドの風雨や駆動などの問題の解決策がダブルスキン ドイツでは湿度が低く、春と秋の気候のいい時期が日本より長いらしいから、自然換気が利用できる。日本では6〜7月は高湿度だから除湿が必要
RWEでは、内側のペアガラスの日射透過率40%前後のLow-Eガラスとダブルスキン内のブラインドと組み合わせて、入射エネルギーの約9割をカットしている 外壁の上下階区画がネックになるので、私が検討した某プロジェクトでもRWEのような対角線状の空気の流れを考えた 今後は輻射をさらに見直さないといけない。例えばブラインドは鉄製より布製が表面温度が低く、床も絨毯と木とでは1度ぐらい違う。人間を取り囲む壁面・天井・床の温度を空気温に近くする努力を建築と設備の両方がやると、同じエネルギーやコストでより快適にすごせる 最近の建築家はファサードをのっぺりするが、安全や太陽エネルギーなどを考えると、庇やベランダの効果を考えた方がいい。必要に応じて庇の角度を調節できると、かなり直射日光の軽減になる 設備コストは、まだかなり節約できる。世の中は限界だというが、それは今までの常識の範囲でのこと。もう少しぎりぎりまでできる技術はあるが、それをやる設計者が日本には比較的少ない
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いけうちせいじ |
1945年 鳥取県生 日本板硝子 建築硝子部 技術部長 RWEは、Low-Eガラスを使うことで、夏は熱線をはね返し、冬は熱を逃がさない。Low-Eで夏も冬も非常にマイルドになり、ガラスの弱点がカバーできる ガラスを2重・3重に使うと緑がかってくるので、日本でも高透過ガラスを使いたいとの話が増えている。透明度が高い必要のある太陽電池で使われるガラスを利用すれば、コスト的にも使い易くなり、これからは変わる 最近、網も熱割れもないガラスができたので、これまで法規的に対応できなかった外壁の上下階区画自身も防火区画も技術的にはガラスで可能になる
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(概要文責 編集部) |