1950年岡山市生。建築家・東北大学工学部建築学科助教授
病院建築計画の実務に携わったあと、スウェーデン王立工科大学建築機能分析研究所で高齢者住環境を研究。帰国後、国立医療病院管理研究所地域医療施設計画研究室長を経て、現在にいたる。高齢者の住環境、痴呆性老人の空間特性を研究し、人間の心や身体のあり様と交流をもつ空間づくりをめざす
著書に『クリッパンの老人たち──スウェーデンの高齢者ケア』ほかがある
現在、自分の生活を持ち込める個室は、おそらく全国で1%以下
4人部屋の方が寂しくない、事故の発見が遅れる等という通念がある。しかし調査すると、4人部屋では、各人は背を向けて自分の世界を守り、怒鳴ったり意見の食い違い以外での会話は殆どない。自分の領域ができて初めて人と関わるし、家族が訪問しやすくもなる。同室者の事故や容態の急変も同室者からは殆ど連絡されない
個室化が、部屋に閉じこもるか、多人数で集結させられるかの、2極化しないよう、小さな友達の輪ができるような中間領域を豊かにする必要がある
今の施設は、専門家が素人を、介護者が虚弱者を一方的に介護するというような、垂直の関係が支配している。しかしグループホームでは一緒に暮らす、水平の関係が可能である。そういう環境の中でこそ、痴呆の方が失っていたものを取り戻すことができる
どの国も、高齢化率が15%を超えると、福祉・医療施設づくりから地域に住むことへと施策が転換される。住まいや町を、心身機能が低下した人達の生活の舞台にするべき
例えば玄関は、出会いや靴の脱ぎ履きといったセレモニーや手続きを喚起する空間的仕掛けだが、そういう空間のない今の施設に痴呆性の高齢者が正直に対応すると「問題行動」と裁かれる。ある所で、空間的仕掛けをつくったら、それに伴うセレモニーなどの行為が生まれた
介護保険制度の、介護が良くて症状がよくなると逆に値段が下がってしまう問題点を改善する必要あり
福祉・医療施設の基本的な配慮点を知らない建築家が施設を建てている。体のメカニズム、生活行為と空間の関係などを知る必要がある。私は大学で、そういう教育を心がけている
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