居住空間をつくる──山本クリニック

山本智之
1953年岡山市生。精神科医・山本クリニック




山本クリニック内観
photo:Aoki Tsukasa
設計に当たって、私は、自分のデイサービスのイメージと、“床はフローリング、壁は木、照明は白熱電球に”という3点だけを話して、あとは信頼する建築家にお任せした
この空間は、外からは閉鎖して見えるが、中からは開放感があり、気持ちがいい

現在、1日平均20人弱のデイケアのお年寄りと外来を、スタッフ9人の体制で、月〜金曜日の9時から4時半まで受け入れている。約50人までは受け入れられるが、今ぐらいがいい

夜間徘徊やせん妄も、不安や戸惑いから生まれている。だから、治すには、その人を病人としてでなく人間として認めることだ。痴呆と人格は関係ない彼らは判断に時間がかかるだけで、非常に知性のある人達なのだ

老人医療には薬物療法がきかない。結局、治療は、何よりも見守り、その人なりのゆったりした時間の流れを保つことが重要だ。もちろん、こういう環境や治療論が合わない人もいる。それはそれで本人の選択だ

スタッフに必要な資質は、痴呆老人の方の心の動きが感じられることと、それを感じてどう動こうかとすることだ

空間の治療効果は分からない。彼らがいやがっていないことは分かるが、それ以上は分からない。ただ、患者にとってもスタッフにとっても、いい居住空間が大事だ。建築家は、収容空間ではなく居住空間のプロであってほしい

(概要文責 編集部)

山本クリニックデータ


目次に戻るTOPに戻る
ご購読ご感想バックナンバーリスト日本板硝子ホームページ


提供:日本板硝子株式会社