生活の場としての施設──おらはうす宇奈月に暮らす高齢者たち

井上由起子
1966年英国生。横浜国立大学工学部建設学科博士課程在籍



個室内の様子。置物がきれいに飾られて
いる
Photo:Inoue Yukiko
施設での生活の様子
全ての入居者は自分の個室(一般的な部屋の広さは12.96平米。洗面設備付き)をもち、使い慣れた生活用品や想い出深い写真などで居室をしつらえている
そのような空間で、入居者は、他の入居者や職員の目を気にすることなく、その人らしい生活を送るとともに、他の入居者と交流している

個室を起点として、少数の居室で囲まれた小さな空間、複数の入居者によって共有しうる空間、食事や行事などプログラムに基づいて利用される空間、地域に対して開かれた空間といったように施設内空間を階層的に計画している
その結果、入居者は個室と共用空間との間を自由に行き来し、自分の領域を段階的に構成することができている
参考図:おらはうす宇奈月平面図

運営概要
施設を運営する総勢19人の介護看護スタッフ(寮母16、生活指導員1、看護婦2)には、施設の設計者から計画の意図などが細かく伝えられた
現在、体操や要介護者の昼食の場が各棟毎に分散化されている

施設をつくりあげるもの
入居者がその人らしい生活を送るために、建築が果たせる役割は小さくないが、それ以上に大切なのは、そこで提供されるサービスであり、建築とサービスがいかに融合しているかという点にある

設計者が提供した空間を住まいへと近づけるためのカギは、そこで暮らす高齢者とスタッフの手に委ねられている。この施設が、住まいへと近づいていく延長線上に、特別養護老人ホームの新しいかたちが見えてくる

(概要文責 編集部)

おらはうす宇奈月データ


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