我がニッポンの高齢者はいま

大熊一夫
1937年東京都生。ジャーナリスト・98年2月から大阪大学人間科学部教授
著書『ルポ精神病棟』『ルポ老人病棟』『母をくくらないでください』『ほんとうの長寿社会をもとめて』『あなたの老後の運命は』等




 
65~69才
70~74才
75~79才
80~84才
84才~
寝たきり
(寝たきりでかつ痴呆の者を含む)
1.5% 3% 5.5% 10% 20.5%
要介護の痴呆性
(寝たきり者を除く)
0% 0.5% 1% 1.5% 3.5%
要介護高齢者の発生率
「平成8年度 高齢社会白書」より

高齢者のおかれている現実
私は、アルコール依存症患者に化けてある精神病院に入院した。入居者たちは切ない生活を強いられていた。特に痴呆性老人がひどい待遇を受け、檻のような部屋に閉じ込められていた
ある老人病院では、1/4程の老人が毎日12時間ベッドに縛りつけられていた
有料老人ホームの一部も私の取材では居心地の悪い「高齢者収容所」だった
こうした状況は今も根本的には解決されていない

収容所臭い日本の施設
日本の高齢者の物理的環境もひどい。特別養護老人ホームの多くは4人以上の合い部屋で、1人当たり面積は約4.5〜10平米しかない

施設・介護が充実し在宅化を進めている北欧
北欧は施設も介護も充実している。近年は、老人ホームは廃止される傾向にあり、充実した在宅支援サービスによって老人たちは約60平米の広さの住宅に住める

介護を押しつけられた日本の家族の限界
日本では家族に介護を押しつけてきたが、それはいかに美談と讃えられようが、連日、深夜にわたって続けば、遅かれ早かれ破綻するにきまっている

心安らかに生活できる場のほしい高齢者
高齢者に好ましいのは、長年住み慣れた自分の家に住めること、それが難しくなったら介護が厚く自宅の雰囲気に近い施設に住めることだ。特に痴呆のお年寄りの住処は数人単位の「グループホーム」がよい、というのは世界的定説だ

3流福祉国ニッポンのこれからは…
わが国も、「介護の社会化」に国民の合意を得られそうに変わってきた
しかし、北欧やドイツなどに比べるとわが国はまだまだ3流福祉国だ。今の状態を日本国民の多くが「ひどい」と思わないようなら、21世紀になっても、わが国の介護地獄は解消しないだろう

(概要文責 編集部)

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