デンマークにおける高齢者福祉の変遷と住居形態

福田成美 ---デザイナー、デザインジャーナリスト、コペンハーゲン在住

鎌田貴子 ---コペンハーゲンにてデンマーク及びヨーロッパの建築を研究



元小学校を改築したNymosegaardの高齢者住宅
photo:Takako Kamada
デンマークの高齢者福祉の変遷
デンマークでは、社会的弱者1人1人の「人間尊重」が社会福祉政策の基本で、障害者や高齢者も社会参加できるように様々な対策が行われている

その高齢者福祉政策は、それまでの生活の継続性の保障、高齢者自身による自己決定の尊重、残存能力の活用、の3原則に基づいて施設内での介護から在宅ケアへ転換した。現在は、24時間看護の必要な高齢者・障害者用住宅に代わって高齢者住宅が建設されるようになり、高齢者の人権尊重と経費削減に貢献している

高齢者の自宅生活は各自治体の提供する、在宅介護・看護、配食、補助器具の貸出などの各種サービスによって援助されている
この在宅ケア制度では、ホームヘルパーや訪問看護婦と共に、住宅改造や自助具の開発にも参画するOT(作業療法士)やPT(理学療法士)が重要な役割を果す

高齢者の居住形態
高齢者住宅とは、自治体が国の援助金を受けて新築/改築した住宅で、援助があれば、自宅で自立生活できる70歳以上の高齢者を対象にしている
各戸の平均面積は67平米で、2部屋にバスやキッチン等が設備されている。そこにはランドリーやリビングルーム、ホビールームなど住居者同志の交流のためのコモンスペースが設けられ、高齢者が、多くの人々と交流しながら活動的で楽しく生活を営める
現在、全国で約1万7千戸。将来も増設していく方針だ

高齢者住宅の例
廃止された小学校の校舎を改造したもの、市民グループがつくった共同のコモンハウスを重要視したもの、プラン検討に当初からシニアが参加してその要望や提案が具現化されているものなど、様々な形態のものがある

(概要文責 編集部)

目次に戻るTOPに戻る
ご購読ご感想バックナンバーリスト日本板硝子ホームページ


提供:日本板硝子株式会社