宮城県美術館
−−教育普及活動の視点から−−
齋 正弘
1951年宮城県生まれ 宮城県美術館教育担当学芸員
個人的には鉄の溶接を使って立体造形を行う作家でもある。


宮城県美術館ワークショップの実際
photo by Sai Masahiro

●普及活動への基本的な考え方
公立美術館と消防署は税金でつくられ、殆どの人は子供のとき以来、行っていない、という共通点がある。消防署とは関わり無く一生を終えたいが、美術館はそうも言えない。だが、多くの人は住む街に消防署が無ければ心配するが、美術館の有無は気にしない。消防署には、いつ電話をしたり駆け付ければよいかみんな知っている。美術館にはどういう時に出かけたり、質問したりすればいいのだろう。宮城県美術館の創作室は、いつでも誰にでも公開されている。

●成立までの視点
当美術館は、開設時に美術センター的活動も取り入れ、市民の自立を促しバックアップするための博物館としての美術館をめざして、次のような教育普及活動を展開することにした。

  1. 誰でも気軽に使える「オープンアトリエ」として作業室を開放する
  2. 実技の相談に乗れる専任スタッフが来た人の課題解決を手助けする
  3. 学校の美術教育を補完・協力してゆく道を探す

●建設準備と基本設計
普及活動の中心となる創作室は、展示室と同じフロアで、かつある程度離れた場所に、できるだけ広く作られた。
各々12m×12mの部屋2つが、間に収納庫とスタッフ控室を挟んでいる。一方は外の作業テラスに面して天井まで開け放たれるシャッターとコンクリート床を持ち、他方は天井中央の換気用吸い出し口と木床を持つ。様々な道具・機械類が用意され、様々な人たちが勝手に作業している。

●美術館教育と美術センター教育との狭間で
我々の美術館はオーソドックスな「美術館」の枠の中にいる。拡大された美術の概念を学芸の中に取り込み、同時に教育普及的な美術の創作活動を展開できる「美術センター」とは、基本的に異なる概念の上に組み立てられるべきである。この、「美術館」と「美術センター」をできるだけ区別し棲み分けながら、具体的なハードウェアへつなげることが必要だろう。

(概要文責 編集部)
宮城県美術館データ

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