美術、
もしくは消滅する領域へ
伊東順二
1948年長崎県生。美術評論家・プロジェクトプランナー
1995年ベネチア・ビエンナーレ日本館コミッショナー
著書『現在美術』等
URL ADDRESS :http://www.justnet.or.jp/home/jext/


「日本美術館」建築モデル by 隈研吾
photo :CIAM International

以前、東京都心の「汐留跡地日本美術館構想」を発表したが、そのねらいは、都市機能の一部として、現代美術を活性化させる啓蒙・実践・伝達作業を日常的に果たせる内容を伴っていることと、「アート」の今後の変化に対応できることだった。

「日本美術館構想」では、ポンピドー国立文化センターで実現された、美術館を一要素として含みつつ、より「大衆性」をもって開かれ、日常生活の中で通過していく人も施設内に巻き込む「交通」や速い速度で展開する「現在美術」に対応する「仮設性」といった機能に、「通信」という機能──さまざまな情報を集約し、加工し、発信する能力──を追加した。

80年代まで社会の実験室であったアートは、90年代には社会で行われた実験を加工展開するフィールドへと変化しつつある。
これからのアートは映像を作り出すこと以上に、その情報を編集・加工する視点や概念の創出が最重要課題となる。これからの「美術館」はその将来を見据えた施設を内蔵しなければならない。

風俗や、ファッションをアートの範疇に含める考えも一般化しつつある。これからは、美術という領域や作品価値の構築作業よりも、「美」という感性の探索に、より大きな労力が割かれるだろう。
それなくしては、あらゆる都市計画や環境構築は無意味だし、感性を尊重する「より良い未来」など来るはずもない。
それを提供できるのは、歴史始まって以来その感性の唯一の判断基準である「美」に長らく携わってきたアートをおいて他にない。

(概要文責 編集部)

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