アートキャンプ白州 木幡和枝
1946年東京生 アートキャンプ白州事務局長・アートプロデューサー・翻訳家。訳書に『生命潮流』『風の博物誌』などがある


剣持和夫作品
photo :Art Camp Hakusyu

<アートキャンプ白州>は、毎年夏の2ヶ月間、山梨県北巨摩郡白州町で美術、音楽、演劇、舞踊、文学、伝統芸能、民俗芸能、建築などの実作者が集まって、神社の社殿・境内、林の中や路上、民家の庭など様々な場所で行われる。

美術は、参加美術家たちが地主から農地や原野を借り、作品制作も展示も期間中だけでなく常時行っている。その目論見は、芸術・芸能の原点である生活・生産の場に、現代そのものの造形表現を置いてみることだ。

だが、ことは簡単ではない。例えば農地で制作・展示するには、農業委員会の許可がいる。なにより「芸術家」の奇想天外な申し入れを最初から信用する人はいない。「これが芸術ねぇ〜」「難しくてわからない・・・」といわれるのがせいぜい。

1年目は、ともかく一度作らせてください、と作家たちが町に住み込みながら制作した。穴を掘り、鉄板や鉄骨を立てるといった重労働を繰り返す美術家たちの姿は、町の人々に、自分たちと同じ労働をしていると信用を生んだ。

私たちが町民同士の関係を刺激し、時には対立や激論を生んだ。かと思うと、作家の助けっ人をかって出る人や、作家の「無題」という作品を見て自分の畑に「無題」と記した粋人もいた。

町の人々と議論しながら続けてきて、都会育ちの私はそれまで知らなかった「日本」を学んだ。「相互不可侵」という礼儀正しい怠惰さと安寧にかまけて、都市的な文脈でしか芸術を考えてこなかったことへの自己批判である。

白州で実践される「サイト・スペシフィックなアート」(場所の具体性に根差した芸術)は、普遍性へと飛躍する知覚の鍛錬をほどこしてくれる。白州で私たちが経験していることは、公私、主客、そして固有性と普遍性が絡み合う実態に十分に身を浸すことだ。

(概要文責 編集部)
アートキャンプ白州データ

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