福岡市美術館 黒田雷児
1961年東京生 福岡市美術館学芸員(アジア美術館展示担当)・専門は日本の戦後美術


リー・ウェン(シンガポール)
「イエローマンの旅No.5 自由への指標」
Lee Wen (Singapore)
"Journey of a Yellow Man No.5:Index to Freedom"
「第4回アジア美術展」1994年
The 4th Asian Art Show, Fukuoka, 1994
photo by Kuroda Raiji

福岡市美術館は全国有数の規模の美術館で、活動領域も郷土の美術、近世日本絵画、泰西名画、映像、現代美術、さらには、古美術展、公募団体展、書道展、地元アマチュアの発表まである。

建築は機能的には明快なモダニズム正統派で、大型企画展の場、充実した所蔵品展示の場、一般市民の発表や普及活動の場、の3つの部分が結合されている。機能的に独立性が強くキャパシティも大きいため、所蔵品展や中小規模の企画展を大きな展覧会と同時に開催できる。

こうした「美術のデパート」となることで市民や地元作家の支持を得ている一方で、現代美術や専門性の高い古美術の紹介、アジア美術展のような国際性・実験性ある事業を行なえる。

「アジア美術展」はアジア全域を対象とした現代美術展で、1994年の「第4回アジア美術展」では、「時代を見つめる眼」をテーマとし、作家を招待しての現地制作やパフォーマンスにより、アジア美術新世代作家の良質な部分を見せられた。この展覧会は美術館という制度や建築の在り方に対する挑戦ともなっていた。

福岡の繁華街の中に様々な作品を展示する「ミュージアム・シティ・天神」も、「美術館」という制度への問い掛けを行う。その基本は「もはや美術館建設の時代は終わった。今必要なのは、美術が都市に流通するシステムだ」という認識である。

私は、日展も印象派展もウォーホル展も見れなくとも、住民が自分の住む地域での作品や美術活動の存在を誇りうるための、独自のシステム確立を目指す勇気と根気のある地方自治体が現われることを夢見ている。

(概要文責 編集部)

福岡市美術館データ

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