博物館とは何か 矢島國雄
1948年横浜市生 博物館学・先史考古学研究専攻。明治大学教授
著書には『博物館学I、II』他がある。



オーレワームのキャビネット
(私設コレクション)

博物館のイメージ
一般に博物館とは不要なものの置いてある敷居の高い建物というイメージだ。しかし、動物園、美術館や水族館、科学館も、博物館だというと、そのイメージは変わるのではなかろうか

博物館の歴史
16〜18世紀の、王侯・貴族・上級市民層の私設コレクションが博物館の先駆だ。
一方、啓蒙的近代と市民革命を経て『もの』と『ひと』が神から解放され、万人が教育を受ける権利が明確にされる。この中で博物館が学校とともに公教育機関と位置付けられ、ものの収集・保存、調査研究、展示、教育を有機的に構成し、世界を体系的に整理・分類して万人に示す、実物による『百科全書』とされた。

今日の博物館
1950年代以降、欧米では資料を分かりやすく展示するようになってきた。『もの』を見せるから『もの』で語るへの変化だ。さらに人材面でも、資料の研究や保存の専門家(curator)だけでなく、展示、そして博物館教育の専門職(educator)が確立してきた

こうして、今日、欧米の博物館先進国では斬新で高度の内容を持った展示や教育活動が展開され、それに対する社会的支持も高い

日本の博物館の現状
日本では、博物館専門職員(学芸員)は研究・教育・収集・保存など全てに責任を負うことになっているが、しばしばいずれかの分野が犠牲にされる

また、開館を控えて学芸員を初めて雇う『家具付き建売』博物館が多い。雇われた学芸員は、少ないスタッフと予算で住みにくい『いえ』に自分の体を合わせるしかなくなる。
一方、建築家が博物館や展示計画を理解していないことも多く、良い博物館が生まれる道理がない

ここには基本的な誤解がある。何よりも博物館は施設ではなく機関である。施設は機関が活動するための『場』でしかない。つまり、博物館が生き生きした活動を続けるには開館まで以上に開館後に金や人手をかけなければならない

ただ、近年、日本の博物館は良くなり始めている。これをさらに伸ばすべく博物館と学芸員は努力を続けていく必要がある


北海道開拓記念館での体験学習風景
photo by Yajima Kunio
(概要文責 編集部)

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