博物館建築の基礎と
新しい方向
戸尾任宏
1930年兵庫県生。建築研究所アーキヴィジョン代表
主な作品は佐野市郷土博物館、川越市立博物館等


博物館の機能構成と所要室・動線(編集部が簡略化)

■博物館の建築計画の基本

1.博物館の基本計画
博物館計画の体制が重要である

構想をきちんと運営者が考えた上で、展示と建築の設計を一緒に進めたい
博物館が負うべき機能
文化財の保存機能を十分に持った上で、展示、そして調査研究、教育普及に加えて、生涯学習機能が必要

2.博物館の建築計画
地域の中で生きる外観を

地域の景観にプラスになる外観が絶対に必要
窓がなく閉鎖的に見えやすいが、視覚的に入り易い建物にすることも必要だ
増築や野外の利用を考えた配置計画を
博物館は必ず増築がある。開館後、市民からの拠出でものが集まる傾向があり、収蔵庫が足りなくなりがちだ。野外での体験学習のスペースが必要な場合もある
博物館の機能構成と所要室・動線
博物館の機能構成と所要室・動線は図のようになる。
収蔵と展示のスペースはほぼ同面積がよい。これからは軽食コーナーやミュージアム・ショップも大切

3.博物館の設計
保管機能----収蔵の基本的考え方

温湿度変化の極小化、コンクリートのアルカリ排除、光(紫外線)の影響排除、の3つが大切
公開機能----展示・講座室、エントランス等の公共部分
展示室は、保存機能と共に見る人に優しいことが必要。そのデザインは、多様性に対応できる普遍空間と個性ある空間の2つの方向性がある
生涯学習機能を担うため、コンピュータで検索できるコーナー等もこれからは必要になろう
市民が日常的に集い博物館が活性化するために、ゆったりと気持ちよい空間も必要

■これからの博物館建築のあり方

1.博物館の「開き方」
市民が自由に利用できるスペースを確保してこそ、開かれた博物館としての活動の芽が育っていく。ただし研究・保存機能との兼ね合いなどを熟考すべきだ

2.新しい技術と博物館建築
保存のための新しい技術は積極的に取り入れる必要がある
しかし、展示を伝える手法の新技術は、肝心の資料をじっくり見ることをおろそかにする危険性もある

(概要文責 編集部)


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